物部川流域の在来作物と伝統食 その2
こんにちは、TABEGORO店主の石川です。前回の続きをお話します。
香美市ものづくり会議物部川ブランド分科会として選定した3つの在来作物は
・山茶
・はちまき大豆
・高系4号護国芋 です。
↑山茶の写真
↑はちまき大豆の写真
↑高系4号護国芋の写真
物部の茶
まず、茶について
だいたい中山間地域では茶の生産が盛んだった名残りがあるものですが、どうして「茶」を選定したかとというと、その歴史的なストーリーでした。
物部は江戸時代後期から明治時代にかけて、土佐三大銘茶のひとつ韮生郷(にろうごおり)の大抜茶(おおぬきちゃ)の産地として茶の生産が大変盛んでした。当時は藩主山内家への献上茶にもなっていたと言われています。
物部の茶づくりの起源は、定かではないですが、平家の落人の宗石平九郎が茶を嗜み、京から茶の種を物部町岡内に持ち込んだと、旧物部村史に載っています。
その後、関ヶ原の合戦後、掛川藩から移ってきたばかりの土佐藩主の山内一豊公が最初に茶の採取を命じたのが物部だったと言われていますので、もうその頃には茶処として有名だったと思われます。
また、明治期には、日本ではじめて英国式紅茶の製造をし、イギリスに輸出した地でもあります。そんな歴史的なストーリーが残っている物部ですが、今はその名残りで茶畑が残っておりいるものの、産地としての商品はなく、各家で自家製の茶を作っている状況です。
明治期後期には紅茶の輸出も安い他の海外産地に価格で負け、その後は養蚕へ切り替え茶畑は桑畑に代わりました。その養蚕も安い海外産地に負け、現在の柚子畑に代わっていったという事です。
物部川の上流域は急峻なV字谷渓谷の地形で、機械化が難しいのも衰退した原因だと思います。
しかし民家の石垣や山中に自生する在来の茶の木がいくつも存在して、現在のヤブキタ種とは違う価値観のある茶が存在しています。
また、各ご家庭での茶作りも釜炒り茶や玉緑茶といった、珍しい製法で茶を作っています。
茶の育った水系と同じ水で淹れた茶が一番美味しいから、、、
TABEGOROの運営会社である土佐山田ショッピングセンターは、香美市でバリューというスーパーをやっています。仕事柄、静岡や京都の有名産地に行き茶商さんと商談した事があるのですが、名産地の茶商さんはだいいたいこういいます。
「まず地元の茶を売らないといかんよ。茶葉の育った水系と同じ水系の水で淹れた茶が一番美味しいから」と。
なのでバリューでは以前から物部の茶を売りたいと思っておりましたが、一般流通してる商品が存在していません。ですから香美市ものづくり会議の調査で「茶」が出てきた時は、とてもうれしかったです。
調査で出会った茶の生産者さん達にお店での販売依頼をしかけたのですが、こちらの思いとは違い「みんな家用に作りゆうだけやき、売りもんになるろうかねー」と言われたり、「だいたい茶らあは、売っても赤字やき、作業するばあ無駄無駄」となかなか産地商品の開発が進みませんでした。
そんな時に協力者が現れます。
元香美市観光協会専務理事の長瀬さんです。
長瀬さんは、テレビ局や広告代理店で働いていた方で、退職後に香美市観光協会の専務理事をやっていました。
TABEGORO店主とは、実は同じ町内で昔から知っている方でしたが、まさか「茶」についてこんなに情熱的な方だとは思いもよりませんでした。
長瀬さんの「茶」との出会いは、広告代理店時代に土佐茶の振興に関わった時に、かつて地元の物部川流域に土佐三大銘茶にも数えられた「韮生郷の大抜茶」と言う茶があったと言うことを知り、大変興奮したそうです。
そこから自ら調査をしたそうです。
「韮生郷」と言う名前を頼りに、物部町ではなく「韮生の里」という道の駅がある香美市香北町を調べたようです。
でも、香北町ではいくら調査しても茶の痕跡がありませんでした。
同じ時期に僕と長瀬さんは壁にぶつかっていたので意気投合しました。
僕は、長瀬さんにものづくり会議の調査で出会った物部の茶の生産者に紹介して周りました。
そして、長瀬さんの熱い説得に9軒の生産者が賛同し、2020年の新年に物部「大抜茶」復活の会がスタートしました。すぐにその年の新茶を統一したパッケージで出そう!と言う事で、釜炒り茶、玉緑茶、緑茶の製法ごとにパッケージを作り、価格設定も生産者が再生産したくなる様な価格に設定をし、その年の5月に新茶の販売をしました。
時は新型コロナウィルスの蔓延による初の緊急事態宣言の下でお販売でしたが、地元の新聞にも取り上げられよく売れました。
2年目の今年2021年5月も新茶の販売ができ3年目に向けて活動をしています。
地元の県立山田高校商業科の生徒さんの協力で新茶の販売会を今年も実施しました。
ユーチューバーのチロちゃんにも取り上げてもらい、なんとチロちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんがコラボしてくれました。
こうして香美市ものづくり会議物部川分科会の調査で発掘した物部固有の産品が誕生しました。
でもまだまだはじまったばかりですので様々な課題があります。
現在販売している物部「大抜茶」復活の会のパッケージの茶葉も在来の茶葉ではなく、やぶきた種ですし、生産者も高齢化していますので後継者問題や、産地として生産量の拡大するためにも後継者が必要です。
そのためにも魅力ある販売価格を維持しないといけません。
どうか次世代に物部の茶が引き継がれるよう皆さん応援よろしくおねがいします。
物部「大抜茶」復活の会のお茶はTABEGOROでも扱っておりますので、興味のある方はTABEGOROのECサイトを散策してください。物部の茶というカテゴリーでセット販売しております。
まさか、茶だけにこんなに書くとは思いませんでした。
今日はここまで、
次回は残りの2つの作物についてお話しをしようと思います。
最後まで読んでくれてありがとうごいます。